えるふプロダクション+ATG 監督:熊井啓
1970年1月31日公開 127分 モノクロ スタンダードサイズ
大塚和が1969年、共に日活を退社した蔵原惟繕、熊井啓、藤田敏八、浦山桐郎、吉田憲二、河辺和夫、神代辰巳計7名の監督たちと設立した「えるふプロダクション」がATGと提携して創った作品である。監督は大塚和と共に『日本列島』(1965年)、『海と毒薬』(1986年)を撮った熊井啓。同名小説の原作者井上光晴と熊井啓が共同で脚本を執筆した。日本の三大差別である朝鮮人、部落、被爆者の人々の葛藤を米軍基地のある佐世保を舞台に鮮烈に描き数々の賞を受賞した。熊井啓監督の沢山の名作のうち、この『地の群れ』は1987年にビデオメーカーによってVHSが販売されたが、DVD化はされていない。
1970年度キネマ旬報ベストテン第5位
1970年度映画評論ベストテン第4位
第25回毎日映画コンクールベストテン第3位
第25回毎日映画コンクール女優助演賞(奈良岡朋子「どですかでん」と共に)
第25回毎日映画コンクール音楽賞(松村禎三)
ミリオンパール賞
日本脚本家協会賞(熊井啓、井上光晴)
ベルリン国際映画祭日本正式代表作品
ストーリー
佐世保で診療所を開く医師宇南(鈴木瑞穂)の患者に、明らかに原爆病と思われる少女がいた。しかしその娘の母光子(奈良岡朋子)は、自分は長崎に原爆が投下された日他県にいて絶対に被爆していないと言い張る。被爆者の集落、海塔新田の仲間と思われるのを恐れているに違いなかった。じつは宇南もまた、自分が被爆者ではないかという不安を抱いていた。原爆で死んだ父を捜し求めて爆心地を何日もさ迷い歩いたからだ。さらに、自分が被差別部落出身者であることを知り、字南は子供をつくるまいと決心していた。子供が欲しい妻の英子(松本典子)はそんな夫の秘密を知らず夫を責め続け、宇南は耐え切れずに酒に逃げる。
ある日、被差別部落の徳子(紀比呂子)が、強姦された証明書を書いてくれとやってきた。字南は炭鉱で働いていた若い頃、朝鮮人の少女を姦して妊娠させ、少女が自殺したのをいいことに炭坑から逃げ出した過去があった。辛い過去から逃げようとして宇南はまた酒に溺れる。
強姦の容疑は、徳子と顔見知りの被爆者信夫(寺田誠)にかけられた。徳子が住む部落と信夫が住む集落のあいだで、長年にわたりくすぶっていた怨念と憎悪が急速に高まった。真犯人は信夫の住む集落の青年であることがわかり、信夫は釈放されて、徳子との間に新たな思いが芽生えた。にもかかわらず、犯人の父宮地(宇野重吉)と徳子の母松子(北林谷栄)を中心に、火のついた二つの部落の対立は、思いもかけない悲劇へと突き進んでいく‥‥。
スタッフ
製作 | 大塚和 高島幸夫 |
監督 | 熊井啓 |
脚色 | 熊井啓 井上光晴 |
原作 | 井上光晴 |
撮影 | 墨谷尚之 |
美術 | 深民浩 |
音楽 | 松村禎三 |
録音 | 太田六敏 |
照明 | 鈴木貞雄 |
編集 | 丹治睦夫 |
スチル | 墨谷尚之 |
キャスト
宇南 | 鈴木瑞穂 |
英子 | 松本典子 |
信夫 | 寺田誠 |
徳子 | 紀比呂子 |
光子 | 奈良岡朋子 |
勇次 | 佐野浅夫 |
松子 | 北林谷栄 |
宮地 | 宇野重吉 |
真 | 岡倉俊彦 |
宰子 | 水原英子 |
金代 | 原泉 |
駒一 | 坂東調右衛門 |
仲川 | 村田吉次郎 |
国領 | 杣英二郎 |
男患者 | 市川祥之助 |
小松 | 市川岩五郎 |
ケロイドの男 | 中村公三郎 |
笠 | 中村鶴蔵 |
宇南の父 | 瀬川菊之丞 |